電源ユニットの効率と力率の違い

電源の力率効率に付いて、自分の中のもやもやを改善する為に調べてまとめました。電源に付いては他にピンアサインピン機能電源規格などに付いてもまとめていますのでよろしければ参考にして下さい。

少なくともPC電源に付いては
力率 = 利用した電力(W) ÷ 流れた電力(VA)
効率 = 電源モジュール以外で利用された電力(W) ÷ 利用した電力(W)

英語では
力率 = Power factor
効率 = Energy efficiency

つまり力率効率は全くの別物です。

専門用語では
流れた電力(VA) = 皮相電力(単位:VA ボルトアンペア)
利用した電力(W) = 有効電力(単位:W ワット)
利用されなかった電力(Var) = 無効電力(単位:Var バール)
となります。

力率改善
電圧と電流のタイミングを合わせようとする事を力率改善と言い英語ではPFC(Power Factor Correction)と言います。

電圧と電流が一緒に仕事をしないと良い仕事が出来ませんが、力を合わせて仕事すると能力を最大限に発揮出来ます。もう一つの効果としてノイズ対策が有ります。電圧と電流がバラバラな仕事をすると、それがノイズに成ってコンセントを経由して家中の機器に悪影響を与えるからです。
PAPFC13.png
図中の電圧と電流の波形のズレは家中の電源コードをノイズとして無駄に通過して他の機器に悪影響を与え、誤動作やコイル鳴きの原因に成り、利用されないまま電力会社に戻ってゆきます。
※:図の波形はあくまでイメージであり実態は個々の電源で異なります。

80Plus認証では力率0.9(90%)以上が必須条件なので、80Plus認証を取得した電源であれば必然的にPFCを搭載していて力率0.9(90%)以上です。80PlusとActivePFCはセットと考えて良いと思いますが例外的にはPassivePFCで力率0.9(90%)以上を達成しているものが有る様です。
近年のActivePFC搭載電源では力率99%以上の物も多く、これ以上の改善が難しい所まで来ています。

効率改善
電源モジュール自身の消費電力を削減する事を効率改善と言います。

個々の電子部品の持つ電気抵抗に電流が流れる事で生じる熱が低い程に効率が良いと言えます。つまり大雑把に言うと抵抗を下げつつ電流も抑えるのが最良ですが、そんなに簡単では無いと思われます。

1:コンセントの100V交流(AC)を直流(DC)に変換する整流回路に一般的な整流ダイオードを利用している場合はダイオードの性質上、両極のダイオードに概ね0.65V(±0.1V程度の範囲)の電圧が掛かる為、100Vの電力から概ね0.65V×2個ぶんを消費(熱に変わる)し、大雑把に言って整流ダイオードだけで0.65V×2個=1.3%効率が悪化します。これはダイオードの性質(並列にしても抵抗器の様に抵抗が減る訳ではなく、ほぼ一定の電圧が維持される)ため整流ダイオードを利用する限りは、この部分を改善する事は困難と思われます。
ACDC整流2
この部分を改善できる可能性として同期整流回路が有りますが、同期整流用のコントローラにも一定の消費電力があり、特に負荷が低い時に効率を悪化させる要因に成ります。また、同期整流には後述のMOSFETを使ったスイッチ動作に成りますのでMOSFETのオン抵抗が効率悪化の要因になります。

2:スイッチングに利用されるMOSFETは出力に直列に接続されますが、半導体の宿命として少なからず電気抵抗が有りますので、これが熱に変換されて出力に比例して効率が悪化します。オン抵抗の低いMOSFETや、多数のMOSFETを並列にしてオン抵抗を下げようとすると部品が高額に成る為、この部分の効率は原価と直結しています。

3:電源の脈流を平らにする平滑コンデンサにはESRと呼ばれる内部抵抗が有りますが、ここを流れる電流×ESRが熱に変換され効率が悪化します。つまりESRの低い電解コンデンサは効率を上げる事が出来ますが、同時に単価が高額ですから、この部分の効率改善も原価と直結しています。但しESRを下げると漏れ電流が増える傾向にありますので悪化させる可能性も有ります。

4:パソコンの電源モジュールは出力タイミングの同期やスタンバイ制御等の為に概ね制御用の小型マイクロプロセッサを搭載しています。制御チップを含む制御回路の消費電力は出力とはあまり関係なく固定的に発生しますので、消費電力の少ない制御チップを選択することで主に低負荷時の効率を改善できます。

5:電源に内蔵されている冷却ファンは電力を消費しますので低消費電力な物にする事で効率を改善できます。電源回路自身の効率が悪いと発熱が多くて必然的にファンの回転数も上がり、ファンの消費電力が増え、電源モジュールとしての変換効率を更に悪化させます。逆に変換効率の高い電源回路は発熱も少ない為にファンの回転数を抑える事が出来て効率改善の相乗効果が期待出来ます。ちょっと調べて判ったのですが高性能FANメーカーとして有名なSANYO DENKIのファンは他社製ファンの半分程度の消費電力で同じ風量を達成しているモデルが多々あります。寿命・静音・風量・消費電力などから適切なファンを選択して交換してみるのも良いかも?しれません。

6:上記以外でも電子部品は多かれ少なかれ個々に消費電力が有りますので、それらの合算値で電源モジュールの変換効率が決まります、



記事を書く発端となったのはYahoo知恵袋のベストアンサーです
例1:効率の高い電源ユニットほど、少ない力率で出力が可能
例2:80Plus電源の力率は80%以上
例3:力率とは、効率です。
これらの回答は、部分的に正解であったり間違いだったり、結局のところ間違いを拡散しているように思いました。(筆者も間違っている所があるかもしれませんが・・・)ブログなら見つけた間違いを訂正出来ますが、Yahoo知恵袋はベストアンサー確定後に訂正する手段が無く、たとえ誤った情報であっても長年に渡り掲載され続け、しかも検索上位に表示され、口コミで更に誤りが拡散されてしまいます。

ネットで力率を検索すると色々な計算式が登場しますが、いずれも真実であり、かつPC用電源モジュールの実情とは異なる様です
日々変化している物の実情を計算式で表現する事は困難です。

パソコンでは利用した電力(W)は殆ど全てが熱に変換されますが利用されなかった電力(Var)は熱に変換されずに電力会社に戻ってゆきます。
例えば理想的なDRAMメモリは構造的にコンデンサの充電で記憶しますので容量性負荷といって熱に変換されず利用されなかった電力(Var)として電力会社に戻ってゆくはずですが、実際のDRAMでは殆どが利用した電力(W)として熱に変換されてしまいます。

力率0.9(90%)で効率80%の電源モジュールを使った場合は流れた電力(VA)のうち10%が利用されなかった電力(Var)として熱に変換されずに電力会社に戻り、残り90%の利用した電力(W)のうち20%が電源モジュール内部で熱に変換されます。そして、

  力率90% × 効率80% = 72%

つまり流れた電力(VA)のうち72%をパソコン本体が利用出来た事に成ります。但し殆どのパーツには個々の電子部品の定格電圧まで電圧を下げる為の降圧回路が内蔵されていますので、厳密には、これらの変換効率も考慮する必要があります。

日本の個人住宅では流れた電力(VA)ではなく利用した電力(W)に対して課金される為、力率が低くても電気の利用料金には影響しませんが、力率が低いと同じ仕事でも無駄に流れる電流が多く成る為、ブレーカーが落ち易く成り、その結果ブレーカーのアンペア契約を上げてしまい基本料が高く成る結果につながりそうです。

逆に効率は電気の利用料金に直結しています。効率90%と効率80%では10%ぶんの利用料金と、その発熱ぶんのエアコン代が利用料金に直接反映されます。冬は暖房代と差し引きゼロくらいですが夏の冷房代は跳ね上がるでしょう。

企業向けには流れた電力(VA)が電気代に関わるケースも有る様ですから、その対象となっている企業では力率を改善する事で固定費の大幅削減につながると思われます。




書き掛け・・・

間違いを含んでいる可能性があり、見付けた方は気軽にコメント下さい。
専門家向けの情報では無く、あくまで筆者(素人)向けに判り易くまとめたものとして書いています。
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Re: No title

> 最近のメーカー製サーバではDC電源をオプションで提供するようになりましたね。
> これも電力効率追求の結果でしょうかね。

4年前の記事の最後に書いてる事を、ようやく大手メーカーも採用しはじめた?
http://dualsocketworld.blog134.fc2.com/blog-entry-165.html

というか大手が一番遅いんですよね。

日本のPC電源メーカーとして知ってる人は知ってるニプロンですが、かなり以前からDC入力電源を販売してます。

個人宅は別としても、いや、個人宅もですが、

UPSもなんですが、太陽光発電は元がDCで、これを一旦ACに変換して自宅に使ってます。これも無駄なので太陽光発電をバッテリというバッファ経由でDC電源のまま使えれば力率も効率も改善なんですよね。

LEDライトも、中にAC-DCを搭載しているので、とても非効率です。

色んな意味で真剣に検討して法整備する様な人が登場しないと世の中全体としては改善しないかもしれません

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Re: No title

> シャープが世界初の直流電源に接続しそのまま使えるエアコンを発表しました。

その様ですね、ブログとは関係無い話題なので書きませんでしたが・・・

> 直流と交流戦争

交流は長距離伝送に有利なので大規模発電所からの送電には適しているという事で、一長一短があると思っています。

UPSや太陽光のみでなく、昔の様にいたる所に水車や風車を設置してローカル発電をする様になれば、またちょっと状況も変わってくるかもしれませんね。その為には蓄電が最大のテーマになるかも?
プロフィール

DualSocketTheWorld

Author:DualSocketTheWorld
自作を始めて20台目くらいになりますが、最初からデュアルソケット限定(始めた当時はデュアルスロット)で自作しており、近年になってAMD K6を試したくなりSocket7でK6-2+のシングル構成で組んだのがシングル初です。

シングルマザー(含:シングルソケットマルチコア)や4ソケット以上の自作は基本的にしませんし、メーカー製PCの改造も基本的にはしません(ノートPCのSSD化くらいはしますが・・・)

基本路線はワークステーションと呼ばれる分野での自作で、OSもWindows系であればProfesionalが主な対象に成ります。

ゲーマーの様なOverClockは行わず、WS路線としてハイエンドCPUとハイエンドGPUの組み合わせで定格或いはDownClockで発熱を抑えつつ、その時のアーキテクチャに置いて爆速かつ静音を目指し、30年以上の長期に渡り稼動状態をキープする事を目指します。

※基本的にリンクフリーです。どこでも自由にどうぞ。

※画像は時々変ります。

※お決まりの文章ですが、改造は個人の責任で行ってください。ここに記載された情報は間違いを含んでいる可能性が有り、それを元に製作や改造などをして失敗しても筆者は一切責任持てませんので悪しからず。

筆者略歴:
小学生時代にゴミ捨て場で拾ったジャンクテレビ数台を分解して部品を取り出し真空管アンプを自作、中学生時代にPC8801mkⅡsrでZ80アセンブラを始める。社会人になって初のプログラムは弾道計算、後に医療系・金融系プログラマ~SEを経て100~200人規模プロジェクトのジェネラルマネジャを数年経験、独立して起業。現在は不動産所得で半引退生活。
(人物特定を避ける目的で一部経歴を変更しています)

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